これを読んでいる人の近所にボロ屋敷はあっただろうか。
街をぶらぶらしてると時々見かけるし、あったと答える人も少なくないと思う。
私は3歳から12歳までそういった家に住んでた。
住んでた時は、暮らしにくいし、馬鹿にされたし、引っ越してからは二度と行きたくないと思っていた。
そのボロ屋もいよいよ解体されると祖父からラインがあった。
その家は
天井にはネズミがいて
風呂の排水溝からもネズミが出てきて
夏は蚊がたくさん飛んでて
ベランダにはアロエが生えていた。
野良猫一家が床下に住んでて
平成後期なのにバランス釜で
床は斜めに傾いていて
いつでも愛すべき家族(ねこ)がいた。
台風が直撃したら吹っ飛んでしまいそうな家だったけど、いざ跡形もなくなって、だれか知らない人の手に渡っていくと考えると何とも言えない喪失感がある。
きれいな一戸建てになって、(元)ご近所さんはボロ家がなくなって安心するんだろうな。
こんな家があったなんて知らない家族世帯が住むんだろうな。
ちょうどさっき読了した小説にも、建物が取り壊される描写があって、背景は全然違うのに感傷的な気分になったりしてる。
「ユージニア」恩田陸
ユージニアでは地域の人みんなに愛された美しい家だったけど、私の育った家は周りからも取り壊しを強く願われていた汚い家。ほんとに全然ちがう。
感想を少し書く。
関係者一人一人の事件にまつわる記憶やら体験が綴られていて、真相もはっきりとは書かれていない。読んでいても想像のしごたえがある、いいお話。
”何者かになりたい。なる能力のある若い女性”の描写があって、チョコレートコスモスを思いだした。チョコレートコスモスすごく好きだから、いつか何かしらの形で続編を世に送り出してほしい…(別の小説の感想になってしまった。)
書いた人